減税財源に別の税金増大を当てれば、人は所得が増えたとは思わないから消費刺激効果はないが、公共投資を引き下げて減税財源とすれば、民間の所得は実質的に増えるため、消費は刺激されるという意見が出るのをよく見かける。
このような意見を述べる人は、前項で指摘したように、公共投資を減らせばそれだけ公共部門から賃金等として民間に流れるお金が減るという事実を、忘れてしまっているのである。
そのため、減税財源を増税でまかなおうが、公共支出削減でまかなおうが、その分民間に流れるお金が減って、減税分のお金の民間受け取り分を相殺してしまうということに、変わりはないのである。
恒常所得仮説と恒久減税一時減税よりも恒久減税がいいという考え方の中には、人の消費はそのときの一時的な所得よりも恒常的な所得に依存して決められる(恒常所得仮説)から、恒常所得を上げるために恒久減税を行うべきだという意見もある。
これも減税の側面だけに注目して、その財源調達を無視した典型例である。
ここで、恒常所得仮説とは何かを説明し、その仮説を使えば恒久減税がいいことがわかるという議論が、あまり意味のないものであることを示そう。
人の消費を決めるものとして、旧来のKインズ的な消費関数の議論がある。
そこでは、消費は行う時点での所得水準に依存して決められると考えている。
現時点で同じ所得があっても、明日から失業する人、明日も同じ所得を得る人、明日から収入が倍増する人とでは、当然現時点の消費もそれぞれ大幅に違ってくるであろう。
このことから、Kインズ的な消費関数が批判され、現時点の所得そのものよりも、恒常的な所得部分の方が消費に強い影響を与えるという、恒常所得仮説の考え方が出てきた。
現代のマクロ経済学では、この考え方をさらに押し進め、生涯賃金の合計現在価値を表す人的資産と、現在保有している各種資産との合計値に依存して、生涯の消費計画が決まり、現時点の消費はその計画の一部を表していると考えられている。
いいかえれば、人は生涯の合計勤労収入と現在持っている資産の合計分を、生涯に分けて使い切るということである。
このとき恒常所得とは、このような総資産の1年分の割当を表している。
このような考え方に立って、恒久減税の効果を考えてみよう。
まず、恒久減税の財源を現在の別項目の増税、あるいは将来の増税でまかなえば、生涯賃金からその分か減少するため、恒久減税分がちょうど相殺されてしまう。
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